相続の対策
相続対策は、大きく次の3 つに区分されます。個々の相続事案によって優先順位、必要性や実効性に違いが生じますが、早めの対策により、より効果的な対策になる場合があります。
(1) 遺産分割争いの対策
相続対策というと納税額をできるだけ少なくするものと考えがちですが、一番重要な対策は、遺産分割争い対策です。これは、実際の相続トラブルの多くは、誰がどの財産を取得するかの遺産分割争いだからです。また、納税額を軽減させる規定の中には、遺産分割を行わないと受けられないものがあります。つまり、遺産分割を行わないと相続
税も軽減できないということです。
対策として最も有効な手段は遺言書を作成することです。遺言書を作成するのは難しいイメージがある方もいると思いますが、ルールに従えばそれほど難しいものではありません。遺言書があれば、遺言内容に不都合な相続人がいたとしても名義変更して相続税を支払うことができます。
(2) 納税資金対策
次に重要となってくる相続対策は、納税資金をどう用意するかになります。相続財産の大半が現預金であればさほど納税資金に困ることはありませんが、相続財産の7 割以上が不動産等というデータがあるなど、すぐに換金して納税できない状況があります。延納や物納といった方法もありますが、担保や利子税の負担といった問題も生じてしまいます。不動産等を換金性の高い金融資産へ組み替えておくなどの対策をすることでスムーズな納税が行えます。
(3) 相続税の納税対策
相続税の納税対策は、大きく次の2 つに区分されます。相続税は、亡くなった方の財産に対して課税されます。その財産が少なければ税額は少なく、財産が多ければ多くなります。そこで財産そのものを減らす、財産の評価額を減らすことにより相続税を減らすことができます。
① 遺産総額を減らす方法
代表的な方法として、相続財産を生前贈与することで相続財産を減らすことができます。贈与税の配偶者控除の規定や住宅取得資金贈与の特例などは有効な手段です。しかし、財産の贈与には贈与税が課税されます。贈与した場合の贈与税と相続した場合の相続税のどちらが税金を安くできるかは一概には言えません。また、相続の場合には受けられる優遇規定が贈与の場合だと受けられないものもあります。これらを検討しトータルでの対策が必要になります。
② 遺産の評価額を減らす方法
代表的な方法として、小規模宅地等の特例があります。亡くなった方が住んでいた家や土地は、通常の方法で評価した価額より減額することができます。また、現預金のまま所有しているより、生命保険契約等の活用により非課税規定を使うことで評価額を減らすことも有効です。以前は借入金によりアパート等の賃貸物件を取得することが相続対策となっていた時代もありましたが、土地の値段が上がらず、アパート収益も確実でない今の時代では、必ずしも評価額を減らす有効な方法ではなくなってきています。